俺も馬鹿な事を言ったもんだ。
>極端な例ですが、例えば、奥さんが財布からお金を抜き取ったのを、夫がそれを知らずに被害届だした場合でも、取り下げるべきじゃないのでしょうか?
だから、近親相盗は例外だって言っているんだけど、わからないかな?
http://q.hatena.ne.jp/1221476211#c130797
それはそうと、「近親相盗」という言葉は初めて聞いたので、すすめの通り検索してみたら、とりあえずグーグルでは3件しかかからなかった。何故?と思って「相盗」で検索したら、正しくは「親族相盗」と呼ばれている言うべきものである事が判明。
で、刑法を参照すると、次のようにある。
第三十六章 窃盗及び強盗の罪
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8c%59%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=M40HO045&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
《中略》
(親族間の犯罪に関する特例)
第二百四十四条 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五条の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
で、この規定は刑法の中では、「第三十七章 詐欺及び恐喝の罪」(第二百五十一条)と「第三十八章 横領の罪」(第二百五十五条)について準用されている。窃盗、横領、詐欺、はともかくとして、恐喝にも適用されているってのは(当然の事とは言え)少々意外だった。
(追記)が、ここで素朴な疑問が。
配偶者、たとえば夫から見て妻が、夫の財布からだまってお金を抜き取ったとしても、民法の規定により、夫婦間の財産は(特段の事情がなければ)共有であるため、窃盗した事にはならないはずだ。
第三節 夫婦財産制
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%96%AF%96%40&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=M29HO089&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
第二款 法定財産制
(夫婦間における財産の帰属)
第七百六十二条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
「窃盗した事にならない」とは「罪がない」、つまり「無罪」という事だ。しかし、刑法の規定では「罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する」とだけある。つまり「有罪」だというのだ(罰がない事は、罪がない事とは異なる)。この点、実際に裁判所で、刑が免除された有罪判決が言い渡された事例というのは、あるのだろうか?
(追記)判例の検索はまた別の機会にゆずるとして、刑法を見て不思議に思った事がある。刑法では、「罪がない」という意味あいの言葉はどうやらなさそうなのである:いや、常識的に考えて、それは当然、というよりそういう表現を入れる事はおそらく技術的に不可能(なぜなら、刑法が罪を規定しているので、その規定した罪がないと言う事はできない)なので、いやおうなくそうなっているのだとは思うけど、少なくとも「罪に当たらない」という表現はあっても良さそうなものだ。ところが、さっきの第二百四十四条の規定や、もっと前の「第七章 犯罪の不成立及び刑の減免」にもあるように、「(罪には当たるが)罰しない」という規定はある。ややこしい。
実のところ、無罰(刑法の規定する罪に該当するが、刑罰の対象とならない)と無罪(刑法に規定されているどの罪にも該当しない)事が同一視されているようで、どうにも気持ち悪い。
良く、数学者が、法律の条文を見て、論理的でないと文句を言うそうだが、まったくその通りだ。